この人に聞く!vol.16 小原流徳島支部 原千恵先生
1976年1月小原流入門。
1997年一級家元教授資格を取得。
原先生は小原流研究院講師として全国を飛び回りながら、お教室では様々な世代の生徒を指導しています。 伝統文化こども教室の運営方法や子どもに教えるコツ、お花を楽しんでもらうためのヒントをお聞きしました。

小原流との出会いについて
-先生といけばなとの出合い、そして小原流研究院講師を目指したきっかけを教えてください。
物心ついたころから伯母が運営するいけばな教室の様子を見ていたので、こどもの頃からお花が大好きでした。大学生時代に神戸の先生の所でお世話になったのが、お花を頑張ろうと思ったきっかけです。それから様々な経緯がありましたが、叔母の影響もあり身近な仕事としてイメージがつきやすかったこと、研究会に指導にいらした素敵な先生から「主婦と講師は両立できるよ」と聞き、講師を目指すことにしました。 研修課程では河骨や珍しい花材など、当時の徳島県では手に入りにくい花材が出題されました。合格に向けて家元教場にも通いました。
‐「主婦との両立」ということで家庭を持ちながら研究院講師を目指されたと思うのですが、大変ではありませんでしたか?
お花をいけているときが、自分だけの集中できる時間となり、受験を控えているこどもたちと一緒に勉強をし、お互いを励まし合いながら自分の講師試験を頑張りました。
レッスンへの工夫について
‐原先生のお教室には学生を含めて様々な世代の生徒がいらっしゃると伺っています。 とくに若い世代の生徒が多いとお伺いしていますが、継続のための工夫や理由はあるのでしょうか。
私があまり色々と押し付けないからではないでしょうか。学生さんは月2回のお稽古ですが、都合に合わせて回数変更や曜日変更をしております。親御さんが迎えに来るまで、勉強する場所を作り勉強したり。 お稽古に対しても子育てにしても「絶対こう!」とは言いません。「押し付けない」ことが、皆さんが自然といけばなが好きになり続けてくれる理由だと思っています。伝統文化こども教室の初年度(2003年)から今もお稽古に来ている方もいらっしゃいます。お母さんになっている子もいるので、もうすぐお子さんも伝統文化こども教室に来てくれるかな?と楽しみにしています。
伝統文化こども教室について
‐こども教室で出会った生徒が今もお稽古しているということは、先生が運営する教室に入会されているのですね。全国的に伝統文化こども教室は「こども教室の運営だけで終わり、個人教室に結び付かない」という悩みをよく耳にします。どのように教室に繋げているのでしょうか。
伝統文化こども教室が始まった当初、参加者は一年間しかお稽古できないシステムでした。現在は継続して受講することも可能となりましたが、私の伝統文化こども教室では「たてるかたち」「かたむけるかたち」のみの指導と決めています。もっとお花を続けたいとき、それ以上のお稽古をしたい方には(自分が開いている)「こども教室があるよ」と勧めています。また、伝統文化こども教室と私自身の教室が同じ場所で開講していること、その場所が駅からのアクセスが良いことも、続けやすい理由の一つかもしれません。
‐伝統文化こども教室はどのように募集をかけていらっしゃるのでしょうか。また、個人教室に来る生徒さんはどのくらいいらっしゃるのでしょうか。
チラシを徳島市内の小学校全校にお配りして募集しています。小学校は局所的ではなく全校生徒分のチラシがないと配布が難しいので、毎年全員分配っています。また、伝統文化こども教室の宣伝には徳島市教育委員会の後援を貰っています。最初に作成したチラシを毎年印刷に回しています。 昨年は伝統文化こども教室に30名の生徒が集まりました。その中で個人教室には10人くらい継続してくださいます。お免状申請は伝統文化こども教室の修了時にご案内をしております。
‐こどもへの指導のコツなどあるでしょうか。
まずはお花を好きになってもらいたい、という思いがあるので「お花とお友だちになりましょう」と伝えます。「水揚げのポイントはお母さん知っているかな、教えてあげてね」など全員に一言ずつ声をかけるようにしています。
伝統文化こども教室では、最後のお稽古時に公民館にあるショッピングモールで毎年花展を開催しています。子どもたちはショッピングモールの開店前に準備に入るので、そのワクワク感を楽しんでいます。開店と同時に親御さんに見ていただくことで、こどもたちの充実感に繋がり、親御さんもこどもたちにも喜んでいただけていると感じています。
私の教室ではいけばなの発表の場として、もうひとつ「こどもたちのいけばなデモンストレーション」をしています。発表時にかけるバックグラウンドミュージックも子どもたちと考えます。以前からピアノを習っている子からは、モーツァルトのワルツがバラのイメージ、近現代曲はたんぽぽで、盛り上がりのある曲は桜がふわっと舞うように感じるとピアノ曲をおすすめされたことがあります。 デモンストレーションでは「たてるかたち」「かたむけるかたち」をいけてもらい、いけ終わったら作品を反対にして会場の皆さんに見えるようにしています。 コロナ禍では保護者もガラス越しにしか見られなかったのですが今回は制限がなく、いけ手の紹介もこどもたちからしてもらい、とても盛り上がりました!


社中のみなさまについて
-「こどもたちのいけばなデモンストレーション」は全国の皆さまにぜひ紹介させてください。 話は変わりますが先生の社中の方に興味深い経歴の方がいらっしゃると伺いました。
ISWF国際学生科学技術フェアという大会に2年前に出場し世界3位になり、ICHOという国際化学オリンピックでは日本代表4人に選ばれスイスへ行く予定の男の子がいます。 現在高校3年生で小学校5年生からほとんど休まずお稽古に来ています。受験の時もお稽古を続け、ISWFに参加する際も休まず来ていました。研究会にも参加する熱心な生徒です。
-科学に化学に...更にはお花に、多彩ですね!
いけばなの時間が気分転換になるようです。花をいけた後に塾に行くので、いつもすごく重い荷物を持ってきます。彼を見ていると時間の使い方が上手だと感じます。お花をいけているときは集中していて、物覚えの速さにも驚かされます。いけ直しはほぼ元通りです。
-すごいですね...。 先生の社中には専門教授者活動をされている方はいらっしゃいますか。また、先生になるようおすすめしたりするのでしょうか。
出産後にお稽古に復帰する方がいたのですが、「先生を目指して復活してみない?」と提案したところ、先生になりました。三級くらいから専門教授者登録をして、今では学校連盟でも活動しています。 最近では集客や開催時間の確保ができず、先生になるハードルが上がっていますが、私はなるなら早い方が良いと思います。 また、伝統文化こども教室では、教室の卒業生である高校生にお手伝いをしてもらっています。中学生にも手伝ってもらえるときはお願いしています。「このお姉さんたちはこの間までこども教室の生徒だったのよ」と言うとこどもたちは喜びますし、高校生は准教授以上になればこどもに教えてあげてと、先生を目指してもらいやすい環境作りをしています。先生になってくれたら嬉しいです。

-先生のお教室にはお子さんはもちろん、大人もたくさんいらっしゃると思います。お教室の雰囲気はどうでしょうか。
和やかな雰囲気でお稽古しております。 ここ2,3年は少しお休みしていましたが、忘年会や夏はビールの会の開催をしています。テーマ性を持たせて仮装したり、こどもたちは二人羽織でお花をいけたりしました(笑)夏はみんなで流しそうめん、冬は餅つき大会をして餅花を作ったりなど、突発的にしております。いけばなだけでなく他の楽しみがあるのもいいのかもしれません。
-最後に、先生は講師の先生でいらっしゃいます。これから目指そうとする方に研修課程の魅力などありますでしょうか。
研修課程に入ったらのめり込むほど楽しく、全国に仲間ができ、地元では扱えない花材を学ぶことができます。 研修課程はどこでも習えることのできないカリキュラムで、足を踏み入れたら抜けなくなる楽しいところです。 ぜひチャレンジしてください。
原先生、この度はお時間を作っていただきありがとうございました!
インタビューを通して、先生自身がお花が大好きで、それを子どもから大人の様々な世代に伝えているという事が伝わってきました。
社中の生徒さんは様々な分野で活躍していると思います。是非機会がある際に教えてください!
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