全国支部紹介vol.11 小原流青森支部

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小原流は全国に144、そして国外には89の支部があります。皆さんが在籍している支部がそうであるように、それぞれの支部に設立のあゆみや特徴、現在の取り組みなどがございます。本ページでは、毎月、全国の支部を1支部ずつご紹介いたします!今回ご紹介するのは小原流青森支部です。九代支部長 伊藤 豊扇先生にお話を伺いました。

小原流青森支部 支部長 伊藤 豊扇先生

幼い頃から身近な自然に親しみ、野に咲く花はもちろんあらゆる草花を愛する"草花大好き少女"として成長。
高等学校に入り華道部に入部したことが本日に至るきっかけとなった。ロシアでのいけばな講師の経験や短期大学での講師の経験などを経て九代支部長に任命。
また2022年初めてオンラインで行われた「学生いけばな競技会」の全国優勝校を指導している。

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家元と理事との思い出の一コマ
青森記念講習展.JPG
記念講習会の様子


30年以上続く学生への取り組み


青森支部では2022年に行われた第一回オンライン「学生いけばな競技会」の優勝校を運よく輩出することができました。 優勝校の青森北高校は私が指導に当たっている学校です。本当によくがんばってくれたと思います。
そして青森支部が学生に力を注いできた歴史があったからこそだと思っています。
青森支部は今から三十数年前、小原流本部とともに「学生のつどい」というイベントを開催していました。
県内の学生を集めてペットボトルなどで花器を作ったり、リンゴを花器に見立てたり、とにかく学生のうちにいけばなに親しんでもらうことを大切にしていました。
そこから「学生いけばな競技会」が始まって、今年のオンライン「学生いけばな競技会」。 継続していくことの大切さを心から感じています。
オンラインでの競技会の開催は新たな取り組みですから賛否両論あったと思いますし、開催後も良い点と悪い点の両方の意見がでたのではないでしょうか。
今回優勝は青森支部の学校でしたが、同じ場に同年代のいけばなを学ぶ学生が同じ条件で競うことにも意味があると考えています。 支部主催で学生いけばな競技会のようなものができないかと企画しているところです。

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2022年学生いけばな競技会優勝校の青森県立青森北高等学校

優勝校インタビューはこちらから。


学生にいけばなを教える大切さ


青森支部の研究会には学生が多く参加しています。
文化庁主催の伝統文化親子教室や各学校からの参加者のお陰で、支部研究会が盛り上がっています。
学校教育に取り入れてもらうために教育委員会に働きかけたこともございました。
動かなければ何も始まらないことは分かっておりましたし、何より「子供の頃にいけばなを習う大切さ」を広く伝えたいという思いがあります。
青森県では高校を卒業すると、ほとんどの子供たちが県外に飛び立ってしまいます。
しかしお花はどこにでもありますし、ほとんどの地域で習うことができます。 そしていつか青森に戻ってきたときにもお稽古を再開することも出来ます。
そうした繋がりを持つことが大切と思っていることが一つです。 もう一つは私はもちろんのこと、青森の先生方、おそらく全国の学生に教えている先生方が思っていることではないでしょうか。
いけばなを習うと良い方向に人が変わると実感しています。 大人しくて自分の意見が言えなかった子供が学生いけばな競技会や研究会に参加して作品の評価されます。
作品の評価の良し悪しはどちらでも良いのですが、作品を評価されることで自信を持ち、意見を言うことができる。 お稽古の場でも、普段の学校の授業では集中することのできない子がお花と向き合う時間には静かに集中している。 もっとあるのですが、とにかくそうした成長を見ていると、まだまだ脳が柔軟な若いころにいけばなを教えたいと思っています。
個人的な話にはなりますが、所謂「荒れた学校」に花をいける機会がありました。 その学校の校長先生が学校が荒れている原因は「元気が良くないこと」と考えて、すがすがしい花で元気にしてほしいという依頼を受けたことがきっかけです。 しかし花をいけるだけではなく、指導もしたかった。
花をいけに行くたびに校長先生と話しをして、学習指導要領とにらめっこしながら営業らしいことをして、何とか入ることができました。 そこの学校では学生がいけた花に名札を付けて、水やりや手直しを学生本人に任せることもお稽古の一環にしています。 生き物を大切に扱うことは、必ず情操教育にも役立っていると信じています。 また青森支部では学生の支部研究会参加を無料に、花材費のみ実費として開催しています。 経営という面ではお金を取らないというのは良くないかもしれません。
しかし研究会の場に並ぶ作品や、自身の作品評価を受けていけばなをもっと楽しんでもらい、スキルアップのために許状申請を高めていもらっています割り切っています。
学校によっては研究会の優秀花、準優秀花を部活動の成果として認め、表彰式で賞状を授与する場合もあるようです。 文化教養に力を入れている証拠として、学校が戦略的に行っているのではないでしょうか。
現在はグローバル人材を求められている時代でもありますから、いけばなを学校に売り込みやすくなっていると思います。
とにかく教育の現場現場に少しでも活動の場を拡げられたらと思っています。


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家元が審査を務めた研究会


造形いけばな展に学んだこと


今では終わってしまいましたが青森支部では全国支部でも珍しい造形いけばな展を開催していた歴史があります。
四世家元小原夏樹先生が存命の頃に、地方にマイイケバナをという動きがあり、工藤昌伸先生や支部の先生方のご尽力により開催されたことがきっかけです。
開催されたころにはいわゆる「団塊の世代」が支部に多くいたので、手探りで大変でも開催できました。
そして継続できるメンバーが揃っていたので、何年も継続していきました。 そのままのかたちをなぞれば、なんとなくうまくいってしまうものです。
そのような状態で続けてしまったので、新しいことや若い人をそこに迎え入れられなかったことが残念です。
その二つは組織だって物事を進めていくのに必ず必要な要素だったと思います。
支部長を引き受けた以上、その二つについては常に意識して活動をしています。


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支部長を引き受けてから


支部を存続させていくためには、とにかく若い人が運営側にいないと難しいということは分かっていました。
今の時代、若い人は仕事に忙しいことは分かっています。 そのため支部役職者の仕事配分を「少し余裕がある」くらいにしておいて、急なお休みにも対応できるようにしています。
休む時にはお互い様ですから、雰囲気が悪くなることはありません。
その他にみんなの花展の会場を明るく広いところにする、研究会会場を変えるなど多くのことに取り組みました。
また、次の世代の育成ということを意識しています。
支部内のことでは新しい良いものを取り込みながら、今ある良いものだけを選んで残していく。
そうして良いかたちで次の人に渡す準備ができたら、後ろで背中を押す立場に回るつもりです。
先に学生といけばなのお話の中で「継続」の大切さをお話したと思いますが、「新しいこと」に取り組むことと両輪で必要なことす。
支部外の活動では青森文化振興協会に加入することや、小原流内部にとどまらず華道界として活動していけるように他流派との連携を図るなどを私個人がしています。
支部長と呼ばれる人の仕事の一つは横のつながりを作り、外に発信していく機会をつくることだと思っています。
小さな積み重ねが大きなチャンスにつながると思っています。

花展の様子.JPG
花展の様子。天井が高く、気持ちの良さが伝わってきます!

「いつ支部長の任が解けても大丈夫なように、後任を育てています。私の役目は支部を盛り上げることと後継者を育てることですから」とニコニコしながらお話をされた伊藤先生。
バイタリティ溢れた活動をこなしながら、あたたかい眼差しで後輩たちの活躍を語るお姿がインタビュー中もとても印象的でした。
伊藤先生、お忙しい中インタビューのお時間をくださり、誠にありがとうございました!



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★支部と学生を繋ぐ施策★ 札幌支部・旭川支部・八代支部の研究会に学生が参加されました!

本部では、2022年度の学生いけばな競技会にご参加いただいた学生を対象に、その方たちが支部研究会に出席された場合に支部を支援する施策を行なっています。 支部研究会に若い皆さまの参加を促すことを目的に実施していますが、今回、札幌支部・旭川支部・八代支部にご協力いただきました。


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