この人に聞く!vol.39 小原流苫小牧支部 長谷 修華先生
長谷 修華先生
1985年5月小原流入門
1989年7月准教授取得
2023年5月一級家元教授取得
2024年4月専門教授者取得
今月は、苫小牧支部の長谷 修華先生をご紹介いたします。
長谷先生は、お仕事をしながら、ご自身のお教室や地域のサークル活動、こども教室とさまざまな場で日々ご活躍されています。昨年は専門教授者の資格も取得され、ますます活動の幅を広げられています。

支部長の石間友香先生にお話しを聞きました
・苫小牧支部はどのような支部かお聞かせください
苫小牧支部は今年創立70周年を迎えました。3月に会員による祝う会、6月にみんなの花展、今月5日には青山尚美先生による記念講習会を開催し、節目の年を皆さんと祝うことができました。
2018年の「北海道地区合同青年部野外展」において、苫小牧支部が担当を務め、支部の青年部が大活躍し、大成功をおさめたことも、大変印象深い出来事です。
支部管内は白老町から浦河町まで160㎞と東西に広く、以前は各地に教授者がいましたが、交通手段の減少や後継者不足によりお稽古を続けることが難しい地域も増えています。
一方で、苫小牧市は札幌に近く、空港・フェリー・高速道路など交通アクセスに恵まれています。
今後は、専門教授者の育成にも力を入れながら、支部の未来に向けて一歩ずつ歩みを進めてまいります。
ここからは 長谷 修華先生にお話しを聞きました
小原流との出会い
・いけばなを始めたきっかけをお聞かせください
社会人になって最初に勤めた職場で、華道部に入ったのがきっかけです。その華道部では小原流の先生がご指導されていて、自然と小原流に入門することになりました。最初は手取り足取り親切におしえていただき、完成した時に「私にもできるんだ」と嬉しく思ったことを覚えています。習い始めた翌年には本科に進級し、同時に研究会への参加を始めました。
・今までに印象に残っていることがありましたらお聞かせください
指導してくださっていた先生の急逝や、子育てなどの事情により、10年以上お稽古をお休みしていました。
そんな中、2015年に苫小牧支部60周年を紹介する新聞記事を見つけ読んでいたら、かつて青年部の役員をしていた時に青年部長をされていた上田敦華先生が支部長と知り、懐かしくなり思わずご連絡を差し上げました。すると、先生から「厚真町へお稽古に来ませんか?」と温かい一言をいただき、このことがきっかけで上田先生の教室へお稽古に通うことになりました。久しぶりのいけばなは本当に心が癒されて、とても楽しかったのを覚えています。あの時の上田先生の一言がなければ、今こうしてまたいけばなに向き合い、指導者として活動できている自分はいなかったと思います。今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
また、2023年に1級を取得したタイミングで、役員研修に初めて参加しました。内容は高度で少し難しさも感じましたが、先生方が丁寧にご指導くださり、全国から集まった小原流の仲間の皆さんと交流できたことで「いけばなって楽しい!」と改めて感激しました。この経験は、自分の中で大きな励みとなり、今後の活動にもつながる大切な一歩だったと感じています。
左:2023年みんなの花展での作品 右:2024年北海道専門教授者勉強会での作品
お仕事といけばなの両立
・お仕事を続けながらいけばな活動をどのようにされているのかお聞かせください
こども教室のお手伝いから始まり、苫小牧市教育委員会の支援学級2か所での講師、はなサークル、専門教授者取得後は自分の教室のほかに、高齢者センターサークルと少しずつ機会を広げてきました。教え始めた当初は平日はフルタイムで仕事をしながら、夜間や週末と有給休暇を利用して指導をして、何とか時間をやりくりしていました。教育委員会の講師は平日の日中に授業があるので、昼休みを長めに取らせてもらうなどで対応しています。
昨年60歳で定年を迎えました。現在は週3日間だけ働き、あとはお稽古やこども教室の対応、いけばなにまつわるイベントや趣味・旅行と切り替えながらストレスなく過ごしています。
左:2024年みんなの花展での作品 右:2024年家元教場での作品
教室やサークル活動での指導
2019年頃、親先生のお手伝いでこども教室の講師を始めたのが最初の指導のきっかけです。
本格的に教え始めたのは、2020年に苫小牧市の教育委員会からご依頼をいただき、不登校生徒の学習支援学級の講師を引き受けてからです。その際「教える生徒さんや教育委員会の方が、どこかで小原流のいけばなに触れたとき"なんか違う"と思われたくない!」の一心で「正しいことを正しく教える」ことをテーマに指導しました。その思いは今も変わっていません。いけばなの歴史や植物の話、お花の名前の漢字の読み方など、ただ花をいけるだけでなく、さまざまなお話を交えることで、生徒たちも興味を持って学んでくれています。私自身、いけばなが楽しいので、みなさんにも「楽しい」「次のお稽古が待ち遠しい」と思ってもらえるような時間にしたいと考えています。
小学生の生徒さん
・指導されてから印象に残っているエピソードをお聞かせください
いつも教場として使わせていただいている学校のアトリエで、お稽古をしていたときのことです。アトリエを管理している大学教授の方が様子を見に来られ「いけばなって、もっと堅苦しいものだと思っていました。でも皆さんとっても楽しそうで僕もやってみたくなりました!どうぞ、いつでもいけばなを飾ってください」と声をかけてくださったのです。そのお言葉がとても嬉しく、感激しました。それ以来、たまにそのアトリエに作品を置かせていただいています。
また、そのアトリエでの活動をきっかけに、こども園から「いけばなを飾ってほしい」とお声がけをいただくようになり、度々こども園でお稽古をしながら、お花を飾らせていただいています。園長先生をはじめ、職員の方のお力添えもあり、こども園でいけばなへの注目が高まり、8月には未就学児向けの「はなあそび教室」を開くことができました。当日は職員・園児の皆さん以外にも、アメリカや大阪から園の視察に来ていた方も見学されていて大騒ぎでしたが、無事楽しく終えることができました。いけばなの作品やお稽古の様子が多くの方の目に触れて、小原流いけばなの魅力が広く認知され、いけばなを楽しむ方がもっと増えたらいいなと思います。
お稽古の様子
専門教授者取得
2023年に1級を取得し、神戸で行われた授与式に参加しました。会場で同卓にいらした鈴木英孝先生から「この中に専門教授者はいますか?」と質問があり、10人ほどの中に1人もいませんでした。その時、先生が「今日、功労者で表彰された先生方をご覧になりましたか?何十年も後進を育ててきた先生方がたくさんいたからこそ今の小原流がある。このままではいけないという危機感を持ってほしい。最高資格であるあなた方が専門教授者となって、小原流をしっかり次世代に残さないでどうする。次に続く後進を育て小原流を守る、その役割こそ1級になったあなた方の使命」とお話しくださり、その言葉がとても胸に刺さりました。探していた答えがようやく見つかったように感じました。これこそが私が小原流でいけばなをすることの意味であり、自分自身の役割だと心から思えました。それが専門教授者を目指すことにした大きな理由です。
授与式にて 左が長谷先生 隣が上田先生
小原流の魅力
生活の中で、場所を選ばずに花を飾ることができるところや、花の表情が表現できるところが魅力だと思います。
指導者としては、小原流のいけばなは型に基づいた寸法や角度が明確に決められているため、どなたにもわかりやすく、再現性が高い点が教えやすいと感じています。ただ、植物は一本一本、一輪一輪、姿や色、形がすべて違うので、手にした一輪の花をよく見て、その一輪がもつ役割や効果を自分なりに考えてもらう「感性」を育てることが、指導者として難しくもあり、楽しい部分と感じます。

2024年研究会での作品
今は「琳派調いけばな」が好きです。
「花で描く」という表現に面白さがあり、挑戦しがいのあるいけ方だと感じます。
2025年みんなの花展での作品
これから
・今後の活動や目標、夢をお聞かせください
「いつか海外でいけばなを教えたい!」という生徒たちの夢が叶う瞬間を見届けるのが私の夢です。
ある日、生徒たちに頼まれてみんなの花展のポスターを準備したところ、後日「クラスでそのポスターを使って、いけばなの魅力や自分の作品について発表した」と聞き、とても感動しました。小さな子どもたちが夢を持ち、真剣に取り組む姿に、私も指導者として恥じないよう努力を重ねたいと強く思いました。
これからもお稽古を重ね、研究会や研修会にも積極的に参加しながら、技術と指導力を高めていきたいと考えています。「土台をしっかり、技術を磨く」という親先生の姿勢から、日々多くを学ばせていただいています。
また、私が初めて指導したこども教室も長く続けていきたいと思っています。少子化の中でも、保護者の方々のご紹介のおかげで、毎年多くの申し込みをいただいています。今後も、地域に根ざした教室として、こどもたちがいけばなを通じて成長できる場を守っていきたいです。
こども教室
インタビューを終えて
先生の明るさと前向きなエネルギーがとても印象的で、小原流をもっと多くの人に広めたいという情熱が伝わってきました。新しいことに挑戦する姿勢や、周りの人を楽しい気持ちにさせる力があり、これからますます素敵な輪が広がっていくのだろうと感じました。先生のもとで学ぶ人が増えていくのが楽しみです。
小原流本部では教授者の皆さまに様々なサポートを行っています。
詳しくはこちらからご覧ください。