この人に聞く!vol.38 小原流湘南支部 三坂 貴光先生

三坂 貴光先生

1983年6月小原流入門
1986年7月准教授取得
1994年5月専門教授者取得
2003年5月一級家元教授取得
2024年11月研修士取得

今月は、湘南支部の三坂貴光先生をご紹介いたします。
三坂先生は、支部でのお仕事・自宅でのお教室・こども教室と精力的に活動されています。いけばな展で賞を受賞された素敵な作品もご紹介させていただきます。


三坂先生プロフィール写真.JPG

支部長の今里 豊節先生にお話しを聞きました

・湘南支部はどのような支部かお聞かせください

湘南支部の研究会は、年間10回、日曜日に開催しております。会員は、嬉しいことに比較的男性が多く、女性も若いと周囲の方から言われます。
皆さん熱心に勉強され、研究会終了後は楽しいいけばな談話が始まります。みんなの花展の折りは、気持ち良く協力して下さり力作揃いの作品に、入場者の皆さんから喜ばれています。
少ない役員達は、受付、会場他事務の仕事をてきぱきとこなして下さり、幹部は幹部会の時間を手際よく進める為にLINEを有効に活用して乗り越えています。また会員の皆さんが楽しく参加出来ますよう、研究花に一種持参や支部の変型花器使用等工夫していますが、今後も続けて努力したいと思います。

ここからは 三坂 貴光先生にお話しを聞きました

小原流との出会い

いけばなを始めたきっかけをお聞かせください

短大を卒業して入社した会社に小原流の先生(横浜支部)がいらしていて、終業後にいけばなのお稽古を食堂で行っていました。 
私は全く興味が無かったのですが、帰る方向が同じ同期の人に誘われて仕方なく
始めたのがきっかけです。その後、彼女は転勤でいなくなってしまいましたが、私は寿退社しても引っ越ししてもこうして続ける事になるとは思ってもいませんでした

3今は亡き恩師 佐藤翠峰先生.JPG今は亡き恩師 佐藤翠峰先生(浦和支部)家元3級から1級になるまでお世話になりました 

・今までに記憶に残ることがありましたらお聞かせください

色々ありますが、2019年の藤沢市展の公募に初めて出瓶して市長賞をいただきました。亡くなった父が庭で育てていたブドウの木を使って、それにさまざまな野菜を盛り付けました。木村明光先生にお借りしたガラスの器、構想もお手伝いして頂き入賞した時は二人で大喜びした記憶があります

2019年藤沢市展公募作品 市長賞受賞.jpg

2019年12月鎌倉芸術館にて行われた木村明光社中50周年記念華会も記憶に残っています。
当時住んでいた実家のご近所にお寺さんが引っ越してくることになり、匂いや音問題の説明会があるとの連絡を受けました。退職して時間もあった為参加したところ、そこは何十年も経ったであろう立派な楓や松や梅や椿の木々におおわれ足元には水仙やつわぶきが植えられている厳かな庭の中の古い建物でした。
そして建物はリフォームして使用するが、庭はすべての木々を抜いてしまうという説明でした。それを聞いた時、この命ある植物たちを切り刻んで捨ててしまう事が信じられず、説明会の後に不動産屋さんとお寺の住職さんに近々ある花展で庭の木々達を使わせて頂けないかと交渉したのです。
それからは、門の鍵を預かり庭の花の咲き具合や見つけた植物の報告を木村先生にこまめに行い切り出しの当日は10人くらいの社中の人達で手分けして頑張ったことが思い出されます。会場となった芸術館のギャラリーに足を踏み入れると、あの庭の木々達の最期の命の叫びのようなものが感じられて、言葉を失う感覚に陥ったのは私だけではないと思います。

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左:木村明光社中50周年記念華会の合作 右:花材をいただいた南天荘の在りし日の庭

2022年藤沢市展公募で大賞を頂いた作品は大変でした。
何を思ったか、水の中で花を見せたいと瑠璃玉あざみや紫陽花を水没させ、重しには卵の透明パックを使いました。
賞を取ると1週間の展示になります。毎朝水を全部抜いて、もう一度器の下から順番に詰めて行く作業をひたすら自分に文句を言いながら行った思い出の作品です。それ以来決して花類を水没させる事をしなくなったのは、言うまでもありません。
6-2022年藤沢市展公募作品 大賞受賞.jpg

鎌倉国際華道協会の展示花の場所がJR大船駅の笠間口の改札内にもあります。ある時必死にいけていると、ひとりの40代くらいの女性が話しかけてきました。
包みを差し出しながらか細い声で「いつも有り難うございます。お花をみることで癒やされています。どうか受け取って下さい」と言います。クッキーらしきものですが、受け取るわけにはいかずお断りすると、再度「ほんとうに癒やされるのです。こんな物で失礼でしょうが・・・」と。何だか私の方が申し訳ない気持ちになり、又そんな思いで作品を見て下さっている方がいるのかと思うと毎回手を抜かずに花材を集め、器を考えて、いけていて良かったと嬉しくなりました。
家に帰ってからクッキーをほおばると何故か涙がこぼれそうになりました。

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JR大船駅の展示花

支部での活動は、いつごろから始められたのでしょうか

湘南支部では、父の介護の為異動願いを出して埼玉から神奈川に転勤&引っ越してきた2014年10月から月例研究会に出席しています。
2018年9月に父が亡くなり、2019年3月には定年数年前でセカンドキャリア支援制度に申し込みをして、いけばなの道で第二の人生を過ごしたいと退職しました。
2016年から研修2期を受講していたこともあって、それからは研修士を目指して本格的にいけばなに時間を使うことができるようになりました。それまで支部の方々には花展等で片付けを手伝って頂いたり、当日朝の活け込みで迷惑をかけたりしていましたので、先生の勧めもあって2020年1月から部員となりました。2022年1月からは準幹部として受付業務を担当しています

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湘南支部7月研究会会場にて受付の4人で 左から本郷先生 城所先生 三坂先生 上條先生

自宅教室

いつ頃からご自宅でお教室をはじめられたのでしょうか

自宅でのお稽古は29歳くらいの時に、埼玉で一緒に働いていた歯医者の歯科衛生士さんの20代の女の子を教えたのが最初です。その後、税理士事務所で一緒に仕事をしていた20代の男の子を教えていましたが、この方は研究会にも参加していました。次に、お花屋さんで働いていた時にお客様でいらしていた50代の女性も教えるようになって、その方は私が神奈川に引っ越した今でも、時々自宅にいらしてお茶&お稽古をしています。
若い女の子は結婚したり、男の子は仕事の関係があったりで持続して習っていくことは難しいと感じています。特に生徒募集を意識したことはなく、現在は本部のホームページに載せて頂いているだけです。最近5人の方々の体験レッスンをしましたが、そのうち20代の女性2人と50代の男性の3人の方が入会して下さいました。

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鎌倉芸術館の展示花(鎌倉国際華道協会)

腰越の親子教室

こども教室をはじめることになったきっかけを教えてください

腰越地区伝統文化いけばな親子教室は親先生のお手伝いで始めました。元々は私自身のお稽古場所であり、父の介護中にはそれこそお花の準備から後片付けもおんぶに抱っこ状態でお教室の方々にお世話になっていました。父の他界と早期退職後、恩返しの意味でも主に指導は大人担当で、事務的な事でもお教室の運営に携わることにしました。
教えるときに気を付けているのは子供も大人も同じですが、枝や花に自分で鋏を入れて切る事と自分で剣山に挿す事です。
感覚的な事は自分が体験して、失敗したり成功したりして初めて身に付くものですから!
後は必ず良いところを褒めます、そして少しだけ直して完成させます。入会されるのは大人も子供も初めていけばなをする方がほとんどだと思います。
生徒募集には本部のホームページの他は鎌倉市の会報誌への掲載をしています。

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木村明光先生と

家元教場

家元教場で受付をされていらっしゃいますが、どのような経緯でされることになったのでしょうか。

家元教場の受付は、募集を見て条件に当てはまっていた為応募したところ採用されました。社中でのお稽古や研究会だけでは大作や様式に触れる機会が少ないのですが、家元教場は大阪研修の勉強にもなり、レッスン料の特典もありとても有意義だと思います。
又、受付の方々は全員研修生で情報交換ができ、同じ目標を持っているので励まし合ったりして交流を深めることができます。
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家元教場での作品

小原流の魅力

小原流を続けてこられたのは何が大きいですか

小原流を続けて42年間、あっという間でした。
横浜支部の小野塚先生には、残業が終わるのを待って20時過ぎから会社の食堂でお稽古をして頂きました。浦和支部では佐藤翠峰先生に子連れでご自宅に伺いお稽古を、河辺先生は研究花は必ず2回のお稽古を、伊藤先生はどんな風にいけてもいつも褒めて下さいました。
そして、現在は湘南支部で木村明光先生に教えて頂いています。
その間に5回の引っ越しをして結婚、出産、離婚、転勤、親の看取りをしています。小原流がどこでも同一のカリキュラムであり、級を保持して次の先生に引き継いでいける仕組みがここまで続けてこられた理由のひとつだと思います。
そして一番大きな理由は、いけばながとても下手だった事だと思います。 月例研究会でも95点がとれたのは師範2になってからです、約1年くらいかかったのではないでしょうか。いつまでたっても95点がとれなかったので次にダメだったらもうやめよう、才能の無いことを続けていても無駄なのだから・・・と思っていた時でした。
地区別研究会で優秀賞がとれたのも22回目の時です。筆記で満点がとれても実技はいつまでたっても75点でした。恐らくこの月例研究会と地区別研究会があったからこそ、来月は来年はと挑戦し続けてここまできてしまったのでしょうね。

研究会で初めて頂いた95点(横浜支部 師範科2期).JPG

研究会で初めて頂いた95点(横浜支部 師範科2期のとき)

2023年、地区別教授者研究会にて95点を頂きました。

9-2023年 地区別教授者研究会にて95点を頂いた作品.jpg
三坂先生の考える小原流の魅力を教えてください

小原流の魅力はたくさんありますが、一番感じるのはさまざまな型や表現の方法があるということではないでしょうか。
色彩なのか写景なのか、かたちでいけるのか自由なのか、生の植物を使うのか乾燥素材や異質のものを取り入れるのか、はたまた器はどんなものを使うのか使わないのか、季節感のある物にするのかしないのか考え始めると膨大な選択枝があって、構想を決めるまでは楽しくも悩ましい日々を過ごす事になります。
そして前述にもあるように、全世界で統一されたカリキュラムに沿ってお稽古がなされていることと月例研究会や地区別研究会、研修士研修会、家元教場など自分が望めばいくらでも勉強する場所があることも魅力だと思います。
現在、小原流創流130周年を機に様式本位の再検討がされていますが、伝統を重んじながら今の時代に合わせてどのように変わっていくのか、どのように伝統を継承していくのか、とても楽しみにしています。

11-2022年鎌倉市民文化祭華道展(鎌倉国際華道協会).JPG2022年鎌倉市民文化祭華道展(鎌倉国際華道協会)

 
私にとって小原流に出会えたことは、人生の宝ものです。同じ目的や悩みを持った友達や仲間が全国にたくさんできました。そして、仕事や育児や親の介護や日々の生活でどんなに疲れていても、お花と向き合った時はすべてを忘れて集中して作品を仕上げることでストレスもなくなりました。
更にいけた作品にはその時の自分が投影されていて、自分を客観的に見ることができます。
あの時私を誘ってくれた同期の友人、そして時には厳しく時には根気強く指導して下さった先生方に感謝しています。

5-2019年鎌倉市民文化祭華道展(鎌倉国際華道協会).jpg


これから

・これからの活動で何か考えていることはありますか?

これからの活動ですが、今年で講師コースの研修の一区切りが付くことから、来年の事はゆっくり考えていこうかな、と思っています。
当面は現在の月2回の伝統文化親子教室の指導、鎌倉国際華道協会での駅展示花や花展への参加、支部研究会への出席と受付業務、家元教場での受講と受付、自宅でのお稽古そして自分の月3回のお稽古、地区別研究会への参加で私にとってはスケジュールが過密状態です。
理想を言えば、飼い犬を預けてのんびり一日中自然の散策に行ったり、美術館に芸術作品を見に行ったりしたいのですが、現実は犬に引っ張られて散歩をして、蚊に刺されながら庭の雑草とりや伸びきった枝を伐ったりして日焼けし汗まみれになっている毎日です。

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左:鎌倉鶴岡八幡宮の献花 右:春の小品花

インタビューを終えて

明るく朗らかな人柄で、いつも周囲を和ませてくださる三坂先生。教室にいらっしゃるだけで、ふんわりと温かな空気が流れるような、そんな魅力あふれる先生です。
生徒一人ひとりに寄り添った丁寧な対応をしてくださるため、多くの生徒さんから厚い信頼を寄せられているのだと思います。今回のインタビューで、自然と笑顔がこぼれるような雰囲気をつくってくださる三坂先生のお教室の雰囲気を感じることができました。


小原流本部では教授者の皆さまに様々なサポートを行っています。
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