この人に聞く!vol.37 小原流福島支部 野村 香風先生

野村 香風先生

1968年2月小原流入門
1971年6月准教授取得
1987年5月専門教授者取得
1991年5月一級家元教授取得
福島支部6代目支部長を20年間務める

今月は、福島支部の野村 香風先生をご紹介します。
野村先生は、2000年から20年にわたり支部長を務められました。現在は、福島支部参与、県連副会長、本部の評議員や運営委員として活躍され、2025年5月に名誉会員となられました。


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支部長の鈴木 睦杯先生にお話しを聞きました

・福島支部はどのような支部かお聞かせください

福島支部は年10回の研究会と毎年継続して「みんなの花展」を開催しています。
支部の雰囲気は穏やかでありながら、会員さんのお花に向き合う心意気はとっても熱いです。
その要因の一つは、季節毎の地元花材の充実にあると感じています。いけばな花材プロジェクトと花店さんの協力に加え、地元花材を提供してくださる花見山の生産者さんの協力は絶大です。今年8月研究会は、本科~一家専・役員まで全員、朝採りの「蓮」を手にできます。
このように恵まれた環境を力に、今後も積極的に活動していきたいと思います。

2025年5月に行われた、みんなの花展の様子はこちらから

ここからは 野村 香風先生にお話しを聞きました

小原流との出会い

いけばなを始めたきっかけをお聞かせください

高校生の頃、母の勧めで、近所にあった遠藤花風先生のお教室に通い始めました。当時はそれほど熱心とは言えず、お稽古をお休みすることも少なくありませんでしたが、不思議とやめたいと思うことはなく続けていました。今思えば、その頃からいけばなにどこか惹かれていたのかもしれません。

福島を離れて

その後もお稽古を続けていらしたのですが、20代のころはブラジルへ渡られたそうですね

はい。結婚後もお稽古は続けていたのですが、途中、主人の転勤の為、約6年間ブラジルで暮らすことになり一時的にお稽古をお休みすることになりました。当時は荷物の制限もあり、いけばなの道具を持っていくことができなかったのがとても残念でした。
現地の市場でお花を見て回ったのですが、いけばなに合うような枝ものや花材はあまりありませんでした。それでも花瓶を買ってお花を挿して楽しんでいました。今でしたら、もっと工夫して瓶花としていけたり、現地の素材を活かす方法があったのではと思います。

帰国して福島に戻られてからすぐに、今度は東京にお住まいだったそうですね

はい。帰国したその年に今度は東京への転勤が決まりました。遠藤花風先生のご紹介で、約1年間ではありましたが、東京の植村春水先生のもとでお稽古をさせていただきました。
植村先生のお教室でのお稽古や他の皆さんの雰囲気に触れるうちに、それまでとは違う形でいけばなの魅力を感じるようになりました。この頃から本格的に「いけばなを深めたい」と思うようになりました。東京支部の研究会にも参加させていただき、とても良い刺激を受けました。

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福島地区華道教授連合会 選抜いけばな展での作品

 

福島支部での活動

福島支部へ戻られたあとの活動をお聞かせください

それまでお世話になった遠藤先生から当時支部長だった田中翠香先生を紹介していただき、田中先生の社中になりました。その後、先生のご指導のもと、先生が担当されていたカルチャースクールで助手としてお手伝いするようになり、そこで専門教授者の資格を取得しました。
また、福島支部の準幹部として研究会のお手伝いをさせていただいたり、幹部として普通会員の皆さんのフォローにも携わりました。その頃から会計の仕事も担当するようになり、6年間その役割を務めさせていただきました。

その後、副支部長を経て、49歳の若さで支部長に就任されました。当時のお気持ちをお聞かせください

はい。当時49歳での就任というのは福島支部歴代の支部長の中でも例のないことでした。
最初は不安な気持ちでいっぱいでしたが、これまでに会計や副支部長を務めさせていただいた経験に加え、周囲の先生方から「しっかりバックアップするから大丈夫」といった温かい励ましのお言葉をいただけたことが、大きな支えとなりました。
皆さんのお力添えがあったからこそ、支部長として一歩一歩、前向きに職務に取り組むことができたのだと思います。

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福島支部創立65周年記念の作品

支部長時代

一番印象に残っている出来事をお聞かせください

やはり、東日本大震災のときですね。幸いにも私の家は大きな被害を受けずにすみましたが、当時は電話もなかなか繋がらず、会員の皆さんの安否確認がとても難しかったのを覚えています。
研究会は震災から2ヶ月後の5月から再開しました。以前使用していた会場の建物はひび割れが生じて使用できなくなり、別の会場を借りてなんとか開催しました。開催中にも余震があり、避難しなければならないこともありましたが、遠方に避難していた会員さんも「みんなに会いたい」と参加してくださり、再会の喜びを分かち合いました。花材については、花木の生産者さんにご協力いただき仕入れることができたので、本当にありがたかったです。
困難な中でも、みんなで支え合いながら乗り越えた記憶が深く残っています。

嬉しかったことや楽しかったことなどをお聞かせください

式典(50周年、60周年)や花展(55周年、65周年)を開催したときの達成感は大きいですね。もちろん、その準備には苦労もありますが、みんなで力を合わせてやり遂げたときの喜びは大きく、ご来場の皆さま方から「素敵ですね」などと声をかけていただいたときには、本当に嬉しい気持ちになります。
また、会員の皆さんが研究会や花展に参加してくださって「参加してよかった」と声をかけてくださると、とてもホッとした気持ちになります。そういう言葉に励まされますし、やってよかったなと心から思います。
さらに、県連講習会が他支部で開催された時に、支部の皆さんと一緒に貸し切りバスで出かけたことも楽しい思い出のひとつです。講習会への参加はもちろんですが、その道中で周辺の施設を見学したり、皆で過ごす時間がとても和やかで、思い出深いですね。
もう一つ、2016年に福島支部から初めて講師の先生が誕生したときは、本当に嬉しかったです。現在もご活躍されていることが、本当に誇らしく思えます。

55周年.jpg福島支部創立55周年記念の作品

2013年には60周年記念行事を開催されました。その時のことをお聞かせください

60周年記念行事では、お家元や理事長様をはじめ、多くのご来賓の方々や地域の皆さまにご来場いただき、心温まるひとときとなりました。
開催前日には、お家元や制作課の方々などに花木の生産者のもとへ足を運んでいただき、お家元には特別講習会のデモンストレーションで使う花材として、枝垂れ桑や野村楓の枝などを選んでいただきました。
その後、花屋さんのお座敷をお借りして、お弁当を囲んだ時間もとても和やかで心に残る良い思い出です。

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創立60周年記念特別講習会の前日の様子

特別講習会では、前日に採取した花材を使ってお家元が素晴らしい作品をいけてくださり、そのお姿を間近で拝見できたことは、会員一同にとって大変感激し、とても貴重な経験となりました。

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創立60周年記念特別講習会の様子


小原流の魅力・今後の活動

小原流の魅力や、福島支部の魅力、お好きな花材についてお聞かせください

小原流にはいろいろないけ方や表現の方法があって、それがとても素敵だなと思います。中でも、自然の風景を表す写景自然が好きです。様式や瓶花も好きで、どれもそれぞれの良さがあります。
福島は花木の生産地でもあり、四季折々の枝ものを学ぶことができます。
特に、水もの花材である蓮は特別です。生産者の方に朝採りの蓮を用意していただき、水揚げして使わせていただいています。新鮮な蓮で会員の皆さんといけられるのは、協力してくださる生産者の方々のおかげです。

今後の活動についてお聞かせください

現在はカルチャーセンターや個人の教室での活動を中心に、日々いけばなの魅力を伝えています。
今後は、支部の若い会員の皆さんが、それぞれのペースで成長し、自分らしくいけばなと向き合えるよう、そばでサポートができたら嬉しいですね。
また、支部のみんなの花展は、周年花展とは違って、身近で親しみやすく、これからも大切にしていきたい行事のひとつです。若い世代がいけばなに触れるきっかけを少しでも多く作っていけたらと思っています。

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2024年みんなの花展での作品


2024年3月に行われた、みんなの花展の様子はこちらから

インタビューを終えて

支部長を20年も務められた野村先生。そのご経歴を拝見して、正直なところ「もしかして少し怖い先生なのかな...」と緊張していました。しかし、実際にお話を伺う中で、そのお人柄の温かさや、いけばなに対する真摯な姿勢、そして支部や生徒の皆さんへの想いにも胸を打たれました。
これからも、先生のご経験とお人柄で、生徒さんのご指導はもちろん、小原流の発展のためにもご活躍いただけることを心から願っております。


小原流本部では教授者の皆さまに様々なサポートを行っています。
詳しくはこちらからご覧ください。