この人に聞く!vol.33 小原流天草支部 栂尾 芳幸先生

栂尾(とがお) 芳幸先生

1984年12月小原流入門
1987年2月准教授取得
2017年5月二級家元教授取得

天草支部支部長 中田美根子先生社中の栂尾芳幸先生をご紹介します。
栂尾先生は全国で様々な修行を積んだのち、ご両親と共にフラワーショップを2店舗経営されています。天草支部の研究会や花展の花材も担当している先生です。


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支部長の中田 美根子先生にお話しを聞きました

・天草支部とはどのような支部か教えてください

研究会の日は、午前中に研究会、午後は役員と参加希望者の勉強会を開催しています。和やかな雰囲気の中、皆さんいけばなを楽しんでいます。
複数の島々からなる天草支部は今年創立45周年。周年花展を11月8日(土)、9日(日)に開催いたします。地域の方々に「小原流いけばな」の楽しさ、素晴らしさを伝えられたら嬉しいです。
また、会員の方々もそれぞれの作品に触れ、体感し、小原流の未来を繋いでいってもらいたいと願っています。


ここからは 栂尾 芳幸先生にお話しを聞きました

小原流との出会い

いけばなを始めたきっかけをお聞かせください

小学校3年生くらいのころ、母がいけばな教室に入門する時に一緒についていったのがきっかけです。今でもすごく覚えています。今思えば、家業が花屋なので将来のことを考えて母がつれていったのかもしれません。
小学校時代はとにかく形をしっかり覚えるためにいけていた印象があります。中学までは毎週お稽古に通って研究会にも参加していました。同年代のこどもがいなかったので大人の中に混ざっていけていました。

修行時代

・中学校を卒業してからの活動をお聞かせください

天草を離れ、近くにお教室もなく10年以上お稽古ができませんでした。システムエンジニアになり全国を飛び回るような仕事をしていましたが、25歳頃、東京の花の専門学校へ入学し1年間通いました。毎日学校で花を触り、技術を叩き込むような学校で大変でしたが、それが今すごく役に立っているなと思っています。
専門学校卒業後は、両親の紹介で金沢の老舗の花屋さんに修行に行きました。金沢支部の研究会の準備にも携わらせていただきましたが、中学時代に見た天草支部より規模が大きく、金沢はこんなにいけばなが根付いているんだなと衝撃を受けました。
その後、横浜の花屋さんで飛び込みで雇っていただき30歳くらいで天草に帰りました。

庭risize.JPG

庭の大王松の切り出し風景

いけばなについて

・研究会には参加もして、花材の仕入れもされているとお聞きしました。

研究会の花材は、支部設立当初から花材を引き受けている母も参加して、支部の方と会議をして決めています。まずは、まちがいなく手に入る花材がどうかが基準となります。次にレベル別に形や組み合わせを決めています。綿密に取り合わせを決めているので、花材が揃わないということはほとんどありません。市場ではいけやすさや色の合わせ具合を見て考えて仕入れをしています。自分がいける花材も仕入れてますからね。

研究会の作品risize.jpg研究会での作品

・好きないけかたはありますか?

写景自然は好きですね。仕事柄、他の流派も見たり勉強をしましたが、その中でも小原流の写景は美しいなと思います。写景が綺麗にいけられるようになりたいですね。

・いける時に気をつけていることはありますか?
なるべく不自然にならないようにしています。家の周りに山があり、いけばなに使えそうな花材がたくさんあります。日々、自然の植生を見ていて、枝は枝らしく、花は花らしく自然を見たままいけたいなと思っています。

過去の作品2と5.jpg

過去の作品1と4risize.jpg作品写真

花屋として感じていること

・仕入れについて

ここ5年くらいでネット販売が主流になってきています。ネットで売れてしまったら、次の日に競りに行ってもないということがあります。どうしても仕入れたい花材は、パソコンの前に張り付いて市場からあがってくる情報をチェックして買っています。買い方が昔に比べるとだいぶ変わりましたね。


・花材について

熊本はわりと枝ものは揃いやすい地域でしたが、イノシシが増えたり高齢化で枝を出荷してくれる生産者さんが減ってきました。少し前に比べて手に入りにくくなっています。研究会や花展の花材は、家の庭や山に取りに行くこともあります。けっこういい花材があるんですよ。
また、物価高もあり皆さんお花を飾るところまで余裕はないとお店にいて感じます。飾りたいけれど買えないのが伝わってきます。

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山の季節の風景

これから

現在いけばなは厳しいフィールドに置かれていますが、いけばながなくなることはないと思います。
大きい支部も大切ですが、地方の小さい支部にも高名な先生に来ていただいて、一般の方を巻き込むようなイベントができるようになるといいのかなと思います。地方の方が家が広くて床の間もあるので、お花を飾るところがあって需要がありそうですよね。
私が住む上天草市では花の生産者が年に1回「上天草花まつり」というイベントをしています。過去にはイベント内でいけばな体験を開催し、こどもたちも喜んでたくさん参加してくれたので、また復活させて花に関心をもってもらい、いけばなにも興味をもってくれるように働きかけていきたいなと考えています。

 

フラワーショップ

小原流だけでなく流派を問わずいけばなを愛する方のために花材を用意しています。
うちの店に来ればいけばなの取り合わせは絶対できますよというくらいのラインナップで揃えています。もちろん花束などフラワーギフトなどにも対応しています。

フラワーショップとがおキャモン店のインスタグラムはこちら

ショップ3risize.jpgショップ1と2.jpg
インタビューを終えて

栂尾芳幸先生は、穏やかな口調のなかに花への深い愛情が感じられました。また、花をとりまく環境を広い視野でみつめ、未来を見据える経営者としての視点が印象的でした。
これからの栂尾先生の活躍に期待しております。

小原流本部では教授者の皆さまに様々なサポートを行っています。
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